最近いろいろ一段落して精神的に安定していたので、久々に園さんの映画でも観て不安定になっておこうと思い、「恋の罪」を観た。ということで、考えたことをメモ。園さんの映画はこれで確か6本目。


動機

「ヒミズ」「希望の国」あたりを観たい観たいと思いながらも観れていない中で「恋の罪」を優先した理由は、水曜日のカンパネラの「ミツコ」。

この曲が soundcloud でよく聴く mix の中で流れてて、だいぶ耳残りしていたのでちょこっと調べてみたら この記事 に辿り着いて、これは観るしかないと思った。この記事を読むまでは「恋の罪」がベースになってることは全然知らなかったので、自分の気になってるアーティストと映画監督が繋がって、うっひゃ〜〜〜ってなってた。


考えたこと

以下、ネタバレ含みます。

作品のキーワードであり、「ミツコ」の中でも「お城の周りをぐるぐる回ってこーい」という歌詞の中で引用されている。

強いて言うならば「城 = 愛」。恋愛ではない。だから美津子は辿り着くことはできないし、いずみに伝えることもできない。

「恋愛を求めていては決して城に辿り着くことはできない」というのが作品からのメッセージの1つなのかなと。これは作中で美津子やいずみの生き様を通して表現されていると思う。彼女達にとっては「恋愛 = セックス」であり、(それを理解しつつも)恋愛に堕ちてしまったがゆえに、城に辿り着けないどころか、その末路は映画を観ての通り。その姿を通じて、恋愛依存の現代人を皮肉っている感じがする。園さんぽい。

また、城に辿り着けない美津子に最終的にトドメを刺すのは美津子の母である怪物婆さん。この婆さんが何の比喩なのかを考えることで園さんの思想にもう1歩近寄れそうな気はした。けど、まだここはしっくりきてない。

とりあえず、カフカの「城」を読まないとあかん。

「言葉なんかおぼえるんじゃなかった」

作中で何度も語られるフレーズ。田村隆一の「帰途」という詩(以下)からの引用。

言葉なんかおぼえるんじゃなかった
言葉のない世界
意味が意味にならない世界に生きてたら
どんなによかったか

あなたが美しい言葉に復讐されても
そいつは ぼくとは無関係だ
きみが静かな意味に血を流したところで
そいつも無関係だ

あなたのやさしい眼のなかにある涙
きみの沈黙の舌からおちてくる痛苦
ぼくたちの世界にもし言葉がなかったら
ぼくはただそれを眺めて立ち去るだろう

あなたの涙に 果実の核ほどの意味があるか
きみの一滴の血に この世界の夕暮れの
ふるえるような夕焼けのひびきがあるか

言葉なんかおぼえるんじゃなかった
日本語とほんのすこしの外国語をおぼえたおかげで
ぼくはあなたの涙のなかに立ちどまる
ぼくはきみの血のなかにたったひとりで掃ってくる

まず、「言葉を認識できるがゆえに言葉に拘束されてしまう」という前提に立てば、単純にこのフレーズは「言葉に縛られるな」というメッセージともとれる。美津子やいずみの境遇を観る限り、言葉に限った話ではないと思うけど。

「恋の罪」について考えるにあたっては、フレーズの中の「言葉」を「恋愛」に置き換えてみるとだいぶしっくりくる。「恋愛」という言葉の幻想的な意味に縛られてしまっているがゆえに迷い悩み、城の周りをぐるぐる回り続けていることにすら気づけないんだよという。だから、美津子はいずみを講義に呼んでこの詩を聴かせ、まずは「恋愛」という言葉に体を伴わせるよう促した。そのとき、まだいずみは「恋愛」という言葉に美しい幻想を抱いており、まだ言葉に体が伴っていない状態だったので。その後、いずみの「恋愛」という言葉にはどんどん体が伴っていくが、上にも書いた通り、それでもやはり美津子ともども城に辿り着くことはできない。二重な皮肉。

あと、「言葉」関連では、自分の身体で得た金を拾わないいずみに対して美津子が放った一言「菊池いずみという言葉が、意味を持つ瞬間なの!」が印象的だった。これは、自分が「自殺サークル」を観て感じたこと と近いことを言っている気がする。

3人の女性について

和子(水野美紀)

狂言回しを担う。美津子やいずみのようにどんどこ堕ちていきはしないが、家庭を持ちながらも不倫に興じてしまう。3人の女性の中では観客に最も近いところにいる存在(観客の代役)であり、逃げ道でもある。

そういう存在である和子が発する作中最後の台詞、「わからん」。これもメッセージの1つになっているのかなと思う。「美津子やいずみがわかったこと、本当はあなたもわかってるでしょ?」と観客を皮肉っている感じがした。最後はごみ収集車にごみ袋投げ入れて終わるのかなと思ってたけど、そうは終わらせずに円山町まで連れて来て最後の台詞を言わせて完全な逃げ道にはしてしまわないあたりがこれまた園さんぽい。

美津子(富樫真)

インスパイア元の東電 OL 殺人事件の OL さんをベースにした存在。

東電 OL 殺人事件は、表の顔はエリート OL・裏の顔は売春婦というわかりやすい対比が話題になったようだけど、個人的には、人によって差はあれどまあ人間そんなもんでしょと思っている。美津子を見ていても裏表があるという印象は受けなかったし、「なんでそこまでするの。。。」とも思わなかった。然りだなと。自分の闇を自分で認識できていないよりは全然マシだと思う。

いずみ(神楽坂恵)

おっぱい。


その他

最後に適当に。

  • 改めて、園さんの映画はアートや詩に近いものであって、「映画」という言葉で縛って認識してはいけないと思った
  • 「恋の罪」について考えてるときに、1つ前に観た「冷たい熱帯魚」についても考えていたけど、これが咀嚼すらできないのは父性を扱っているからなのかなと思った
  • 「魔女っ子クラブ」然り、美津子以外にも東電 OL 殺人事件を意識してる部分が意外と多いみたい
  • 「恋の罪」を観て「ミツコ」の歌詞の謎が解けてしまったがゆえに曲の魔力が少し弱まった気がするので、謎であることの価値について考えさせられた